高齢者とペットとの共存のために考えること【後編】

前編では高齢者がペットと共存することが、心とからだに良い影響があり、高齢者のためにセラピー犬を迎える施設がある一方で、高齢者が自宅でペットと暮らすことをあきらめざるを得ない現状と、その問題点についてお伝えしました。

今回は、世界からも注目されているアメリカのミズーリ州にある高齢者施設「タイガープレイス」からどのような仕組みが高齢者とペットの共存を可能にしているのか、お伝えしたいと思います。

前編はこちら

ワンヘルス・ワンメディスンという考え

「タイガープレイス」には「ワンヘルス・ワンメディスン」という考え方があります。動物の健康も人の健康も別々に考えるのではなく「人とペットの健康は互いに影響があり、互いに依存している」という考えです。ですらここでは高齢者とペットとの絆を大切に、「ひとつの健康ひとつの医学」という考えのもとにケアします。

そしてそのケアは高齢者の介護状況にどのような変化があったとしても、生涯住まいを変えることなく続きます。ですからタイガープレイスで暮らす人々は、人としての尊厳を持って、安心した環境の下でずっと暮らすことができるのです。

ほんの少し手を差し伸べるという考え

タイガープレイスで暮らす高齢者は、ペットのお世話も含めて「できること」は自分で行います。高齢者の自立した生活を実現させているのが、この施設があるミズーリ大学のサポートです。この大学では獣医学、医学部、看護学部、リハビリ療法学など、様々な学部が高齢者とペットの必要に合わせてきめの細かいサポートをします。

例えば、高齢者のペットは月に一度獣医さんの訪問を受けますが、その他に一週間に三回、学生がお部屋を訪問し、フードや水の確認、ゲージの掃除をしてくれます。この時重いフード袋も持ってきてくれます。また高齢者には難しいペットへの投薬や点眼など、必要な時に獣医学部の学生が細かいところまでケアをしてくれます。

お散歩に不安があれば高齢者の歩行を支えるために、看護学部の学生が一緒に行ってくれます。ひとりひとりの、その時の必要に合わせてちょっと手を差し伸べてくれるのです。
このような方法は、高齢者の尊厳を大切にしていることがよくわかるシステムです。

ペットと暮らす高齢者の不安がない

ペットと暮らす高齢者の一番の不安は「自分に何かあった時、残されたペットはどうなるのか」ということです。タイガープレイスでは一時的な入院も含め、残されたペットは今まで通り、ここで世話を受けることができます。また、住人同士で前もって、お世話をお願いすることもあるそうです。

すべての住人がみんなのペットを知っているので、飼い主に何かあったらすぐに引き取りたいという気持ちになるそうです。施設内の住人は普段から顔見知りですから、新たな飼い主を自分で決められるということは、いつも暮らしているこの場所で、残されたペットがその後どのような生活を送るか、想像できるので不安がありません。

またお部屋に定期的に訪問することで、ペットや高齢者の体調の変化や病気の早期発見に繋がっています。医師や看護師、獣医師も常駐していますので普段の健康管理はもちろん、突発的なことにも素早く対処できます。大変な病状の場合は、同じ構内の医学部や獣医学部の援助を受けることができます。

高齢者がペットと暮らすことを推奨する理由

この施設を立ちあげたレベッカ・ジョンソン博士は、長年に渡って高齢者とペットとの関係を研究してこられた方です。その研究によって高齢者がペットと暮らすことを推奨しています。その理由は「ペットが与えてくれる無償の愛が高齢者の生きる力になっていることが実証されているから」です。

高齢者の健康状態が少しずつ悪くなっていく中、朝起きる目的をペットは与えてくれます。散歩に出かけるなら見知らぬ人から声をかけられ、自然と会話し、笑顔になります。散歩に出かけるために体力をつけようと運動し、食事管理も意識します。すべてはペットのためにという考えになり、考え方が変わると、心の変化も起こります。

たとえ杖をつかなければ歩けない状態であったとしても、心はとても健康で、前向きです。
実際ペットと暮らす人は落ち込みにくいという研究報告があります。
ですから高齢者にとって自分の他に気に掛ける存在があることはとても大切といえます。

まとめ

タイガープレイスは「高齢者とペットとの豊かな生活を実現する」という一つの考えを形にしました。それは教育機関や医療、獣医医療機関など、それぞれの専門機関がチームとなり力を合わせて協力したからです。その協力があってこそ、高齢者とペットとの豊かな暮らしが実現できました。

日本でこのような施設を建てることは可能なのでしょうか?
国によって異なる法律や文化の違いなど考えると、この事例をそのまま持ち込むことは難しいかもしれません。ですがこの実例は、私たちの社会で重要なテーマである「高齢社会」「ペットの殺処分問題」などを考える時に、たくさんのヒントを与えてくれているのではないでしょうか。

近い将来日本においても高齢者とペットが不安なく暮らせるタイガープレイスのような場所ができたらと願います。

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