不思議な能力シリーズ3「地雷探知犬」

私たちの生活をさまざまな形で支えている犬たち。盲導犬や介助犬の働きは健気で見る人の心を動かします。

今回ご紹介するのは「地雷探知犬」。人の生活を支えるために訓練された犬はたくさんいますが、「地雷探知犬」ほど大変な訓練を受け、命にかかわる仕事をしている犬はいません。「地雷探知犬」にはどんな犬たちが選ばれ、どのような訓練を受けるのでしょうか。今回は世界で働く「地雷探知犬」をご紹介したいと思います。

地雷探知犬育成の目的

世界中で埋められている地雷の種類は340種類、推定で5000万個といわれていますが、地雷は誰にも見つからないよう地中に埋められたのも。実際の数は分かっていません。地雷の中には探知機では反応しない手製地雷というものがあり、犬の嗅覚で火薬のにおいを感知して探すほかに方法がありません。そのようなことから「地雷探知犬」が育成されることになりました。

 

地雷探知犬訓練センター

「地雷探知犬」の訓練センターはボスニア・ヘルツェゴビナという東ヨーロッパにあります。この訓練所では実際に「地雷探知犬」として活躍している犬を両親に持った子犬を繁殖させ、ていねいに育てます。その種類はベルギーの牧羊犬マリノア。ジャーマンシェパードの仲間で、自分の家族に忠実でとても賢く、においを嗅いでものを探すのが好きな犬種です。

訓練センターのあるボスニアの地質は粘土を含んでいて地雷のにおいが出にくい土地です。毎年雪が降りつもるたびに地雷は地下へと深く押しやられ、まるでラップにくるんだチーズを地下に保存しているようなものです。暑い気候は、においが出やすく地雷を見つけやすいのですが、より厳しい状況の中、犬たちは訓練を受けています。

 

誕生したその日から始まる訓練

「地雷探知犬」の訓練は最初の1週間が最も大切です。脳の発達を促すため、生まれたその日に、目が開いていない子犬の体を抱きかかえながら足の裏を刺激します。抱っこは人の体の温かさにふれさせるためです。将来人間のために働いてくれる犬に育つかどうかはこの時期にどれだけ人と触れ合うかにかかっています。それで、いろんな人とふれあうために近所の子供たちも放課後に訓練センターに来て子犬たちの遊び相手をします。こうして愛情いっぱいに育てられた子犬たちは人との絆を育んでいきます。

 

地雷探知犬になる子はどんな性格?

地雷探知犬の訓練で一番大切なこと。それは「探す」こと。犬はもともと狩りをする動物なので狩猟本能を持っています。それで子犬の時からタオルを噛んで引っ張ったり、振り回したりと遊びを通して狩猟行動を強化していきます。また、火薬のにおいのついた小さな破片をいろんなところに隠し、犬がどのくらい根気強く探し続けるか注意深く観察します。障害物があってもあきらめず、見つけるまで探し続ける子犬は「地雷探知犬」としての適性があります。このように地雷探知犬になれるのは最も集中力が高く鼻が効く犬たちだけです。

 

地雷探知犬とハンドラーの絆

「地雷探知犬」はハンドラー(いっしょに探知作業する人)とペアを組んで働きます。1匹と1人は地雷原の真ん中を歩いていきます。どこに地雷があるか分からないのに怖くないのでしょうか。ハンドラーは「100%犬を信頼しているから大丈夫」とにっこり笑います。実際、犬が地雷を見つけられずに事故が起こったことは今まで一度もないそうです。

いよいよ作業開始です。ハンドラーはまず地面に2本の赤い棒を40センチ(iPadmini横幅×2)の間隔で置き、草を刈ります。そして金属探知機で調べます。『ピー』という音がしても掘り出してみたらただの釘ということもあります。そこで「地雷探知犬」の出番です。

鼻を地面に押しつけたままにおいを嗅ぎ続け、地雷を見つけたら「見つけたよ!ここだよ!」とその場におすわり。これが見つけた合図です。一度に調べられる幅はたったの40センチ。戦争があった場所には爆発した火薬のにおいがあちこちに残っているので、まだ使っていない地雷だけを見つけることは優れた鼻を持っても簡単なことではありません。

日中40度の高湿高温の中、気の遠くなるような時間をかけて繰り返しハンドラーの置いた赤い棒の中を探します。時間をかけたからといって毎日地雷が見つかるわけではなく、何週間も出ない日が続くこともあります。こんな大変な仕事のご褒美は何だと思われますか。それはハンドラーと大好きなコン(赤いゴムでできたおもちゃ)で思いっきり遊ぶこと。そんなささやかなことが犬たちにとって何よりのご褒美なのです。

 

まとめ

「地雷探知犬」のおかげで地雷だらけだった原っぱに学校ができました。子どもたちは思いっきり走り回り、サッカーもできるようになりました。今でも地雷がある場所には赤い警告板が経ち、そこで暮らす人々の日常があります。そして世界中の子供たちがどこでも駆け回れるように今日も地雷探知犬の仕事は続きます。

リジリエンス(Resilience)という言葉をご存知でしょうか。逆境を跳ね返す力、回復する力という意味があるそうです。まさに「地雷探知犬」の姿はリジリエンスそのもの。人々の心に「乗り越えられない困難はない」と思わせてくれる希望となっています。

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