不思議な能力シリーズ2「がん探知犬」

今医療の現場では人を支え、力になってくれる犬の活躍が注目されています。

前回は、Ⅰ型糖尿病患者さんの命にかかわる低血糖状態を知らせる「低血糖探知犬」をご紹介しました。今回ご紹介するのは「がん探知犬」。

「がん探知犬」の研究は今世界数十ヵ国で行われています。このような研究の発展に大きく貢献したのが、実は日本初の「がん探知犬」です。「がん探知犬」は「低血糖探知犬」同様、その驚くべき能力によって医療の現場に大きな影響を与えています。今回はその彼らの活躍についてご紹介したいと思います。

がんにはにおいがある

がんは今、日本人の2人に1人が生涯でかかると言われる病気です。がんの恐ろしいところは、初期にはほとんど自覚症状がないということです。この自覚症状がない状態でがんを見つけることが「がん探知犬」のお仕事です。

症状にもでないがんをどのように見つけるのでしょうか。
最近の研究ではがんには特有のにおいがあることがわかりました。「がん探知犬」はこの特有のにおいを嗅ぎ分けてがんを見つけます。

がんをほぼ100%見つけられるがん探知犬

「がん探知犬」の訓練は、まずがんのにおいを覚えさせます。それから部屋の中に5つの箱を置きます。健康な人の呼気が入っている医療用の呼気パックが4つ、1つががん患者さんの呼気パックです。そしてどれががん患者さんのものか犬に探させます。
犬はこれだと思う箱の前に座り「がんはここにあるよ」と教えてくれます。また5つとも健康な人の呼気の場合、犬はどこにも座らず訓練士さんのところに戻ります。それは「どれにもがんのにおいはなかったよ」という犬のメッセージです。

「がん探知犬」は、がんが初期でも末期でもあらゆる種類のがんをほぼ100%の確率で見つけ出します。

最初のがん探知犬は元水難救助犬

実は最初の「がん探知犬」は水難救助犬として活躍していた犬でした。千葉県館山市にある「がん探知犬育成センター」は設立前、水難救助犬の育成を行っていました。その訓練は主に海でおぼれた人を助けるために、海に飛び込んでロープや浮き輪を運んでいくというものです。ですが水の事故では海に沈んだままの遺体も多く、見つけ出すのは困難でした。

そこで訓練士の佐藤さんは、「犬の嗅覚を使って水中の遺体からでるガスのにおいを手掛かりに捜索することはできないか」と考え、マリーンという、とびぬけて高い嗅覚を持つラブラドールレトリバーを訓練することにしました。マリーンの嗅覚はどれ程とびぬけているのでしょうか。ある時こんな実験をしました。

肉の塊を入れた2本のビンと野菜や果物を入れた数本のビンを用意し、肉のビンを1つ残し広い砂浜のどこかに埋めます。これらのビンは潮の満ち干によってどこへ移動してしまうか分かりません。数日後、残しておいた肉のビンをマリーンに嗅がせます。マリーンはどうしたでしょうか。あちこち探した結果ある場所を掘りました。

そこはとても遠い場所だったのでもう一度探させましたが、やはりマリーンはそこを掘ります。すると、50~60センチもの深いところから肉のビンが出てきました。数日たっても、流された距離が遠くても、マリーンは探し当てました。そして半年後、見事20メートルの海底に沈んだ遺体を探し当てることができるようになりました。

がん探知犬の誕生

ではこの水難救助犬がなぜ「がん探知犬」になったのでしょうか。訓練士の佐藤さんの発想から生まれたようです。佐藤さんは「犬の優れた嗅覚で病気を見つけることはできないか」「そもそも病気にはにおいがあるのか」そのような誰も考えつかなかったアイデアを思いつきました。そしてこのアイデアを現実のものとする挑戦が始まります。

世界に認められたがん探知犬

訓練を始めた2004年当初、 医療の現場では犬を使って病気を見つけるという考えに対する反応は厳しく、がん患者さんの呼気を提供してくれるところはありませんでした。
その後、協力して下さる先生が見つかりました。先生は「非科学的なものと思われるのではなく本物の科学にしなければなりません」とアドバイスされ共に研究を重ね、2011年世界的な医学雑誌に研究報告を発表したところ、冒頭でもお伝えしたように「がん探知犬」は大きな反響がありました。

そしてその研究報告は世界的に認められるようになりました。その後日本でも山形県金山町(胃がん死亡率全国1位)で、この「がん探知犬」による初の健康診断が行なわれ、実際にがんを見つけることができました。

まとめ

今回ご紹介した「がん探知犬」。私たち人間では識別できないがんのにおいを教えてくれました。そしてそれは新しい医療の取り組みの一歩ともなりました。これは本当にすばらしい能力です。

こうした犬の活躍は本来の能力だけでできるものなのでしょうか。

訓練士の佐藤さんが訓練でひとつだけポリシーとしていることがあるそうです。それは「エサでは訓練しない」ということ。愛情を示すことだけが報酬としていることで、犬との信頼関係や絆はとても強いものとなるそうです。訓練士さんとその子だけの特別な絆。それが犬のすばらしい能力を引き出すのかもしれませんね。

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